導入:応募は来るのに、なぜ採用が決まらないのでしょうか
「求人媒体からの応募は毎週のようにあるのに、なぜか面接に繋がらない」「面接までは進んでも、その後の辞退や連絡途絶が多い」。これは、多くの病院、クリニック、介護施設の採用担当者様が抱える、深刻でありながら非常に一般的な悩みです。採用活動の現場で多くの責任者の方々とお話しさせていただくと、応募に対する初動、つまり「最初の返信は即日対応する」「面接もできるだけ早く設定する」といった初期段階の対応は、多くの施設で徹底されています。しかし、問題はその後にあります。応募者との最初の接点から、面接や見学当日までの間に、計画的で継続的な接触が不足してしまうことで、候補者の関心や志望度が徐々に薄れていってしまうのです。この「サイレント期間」とも呼べる空白の時間が、実は採用成功率を大きく左右する要因となっています。
候補者は、貴院・貴施設に応募すると同時に、複数の他の施設にも応募し、比較検討を進めているのが通常です。その中で、ただ面接の日時を伝えるだけの事務的なコミュニケーションに終始してしまうと、候補者の心の中に「ここは本当に自分を歓迎してくれているのだろうか」「自分のことを理解しようとしてくれているのだろうか」という小さな不安が芽生え、時間と共にそれは大きくなっていきます。
本稿では、私自身が数多くの採用現場で成功事例と失敗事例を分析し、その中から見えてきた共通の成功パターンを一つに抽象化し、体系化した「3接触ルール」という考え方と、その具体的な運用方法について詳しく解説します。このルールの核心は非常にシンプルです。それは、応募から初回の職場見学、あるいはお試し勤務が実施されるまでの期間に、「最低3回の計画的な接触」を必ず設ける、というものです。この一見地道なプロセスを丁寧に実行するだけで、面接の直前キャンセル(ドタキャン)や、理由が明確でないまま連絡が取れなくなる「なんとなくフェードアウト」といった事態を大幅に減らすことが可能です。結果として、1名の採用を決定するまでにかかる候補者との平均接触回数を、過不足なく最適な状態に整えることができます。
この記事でご紹介するプロセスは、弊社が提供する看護師向けのお試し勤務マッチングサービス「クーラ」(https://business.cu-ra.net/)の仕組みと、非常に高い親和性を持っています。クーラは、採用の初期段階で「1回から4回の有給お試し勤務」を実施することを前提として設計されており、従来の「面接のみ」で合否を判断する採用プロセスに比べて、候補者が抱える入職前の不安や迷いを、実際の業務体験を通じて解消できるという大きな利点があります。記事の途中では、この「3接触ルール」とクーラを組み合わせることで、いかに採用プロセスを円滑化し、決定率を高めることができるか、具体的な導入ポイントも交えながらご説明していきます。
背景と課題:看護師採用における“接触密度”という視点の欠落
なぜ、応募があったにもかかわらず、採用に至らないケースが後を絶たないのでしょうか。その根本的な原因は、候補者との「接触密度」が不足していることに起因する場合がほとんどです。ここでは、多くの施設で見受けられる典型的な失敗パターンと、なぜ「3回の接触」が有効に機能するのか、その背景にある心理的な側面から掘り下げていきます。
よくある採用活動の失敗パターン
採用活動が思うように進まない施設には、いくつかの共通したパターンが見られます。自院の状況と照らし合わせながら、ご確認ください。
- 初動だけが速い、しかしその後が続かない応募があった当日、あるいは翌営業日の午前中には返信する。面接日の設定も迅速に行う。ここまでは素晴らしい対応です。しかし、問題は面接日が1週間後、あるいはそれ以上先になった場合に発生します。面接日の案内を送った後、当日まで何の連絡も取らないというケースが散見されます。この空白の期間は、採用担当者にとっては「待っている時間」かもしれませんが、候補者にとっては「他の応募先との比較検討が進む時間」であり、「貴院への関心が薄れていく時間」なのです。
- 候補者が必要とする情報が不足している候補者は、応募した段階ではまだ多くの不安を抱えています。給与や勤務時間といった条件面だけでなく、「職場の雰囲気はどうか」「導入されている電子カルテは自分でも使えるだろうか」「具体的にどのような業務を担当するのか」「初日は誰が指導してくれるのか」「休憩はきちんと取れる環境なのか」といった、実務に直結する細かな情報を求めています。これらの情報が見学や面接の前に提供されないと、候補者の不安は解消されず、来訪意欲そのものが削がれてしまう可能性があります。
- 候補者側の比較検討で劣勢に立たされる現代の転職活動では、候補者が同時に3〜5件の求人に応募することは珍しくありません。もし、競合する他の病院やクリニックが、LINEなどを活用して職場の様子を伝えたり、こまめにメッセージを送ってきたりした場合、どうなるでしょうか。事務的な連絡しかしてこない施設と、親身に情報提供をしてくれる施設とでは、候補者が感じる「温度差」は歴然です。結果として、より丁寧なコミュニケーションを取ってくれる施設へと、候補者の気持ちが傾いていくのは自然な流れと言えるでしょう。
- 意思決定を後押しする“最後の一押し”が欠けている面接や見学を終え、提示された条件も悪くない。しかし、候補者が「ここで働きたい」と最終的な決断を下すには、論理的な納得感だけでなく、感情面での安心材料が必要です。「この人たちとなら、うまくやっていけそうだ」「歓迎されていると感じる」「困った時に助けてくれそうだ」といったポジティブな感情が、意思決定の最後の決め手となります。この感情的な繋がりを醸成するための、丁寧な接触が不足しているのです。
なぜ「3回の接触」が効果的なのか
人の意思決定のプロセスには、不確実性を避け、より確実で安心できる選択肢を好むという基本的な性質があります。応募直後の候補者の心理状態は、新しい職場への期待と、未知の環境への不安が複雑に共存しています。この「不安」を、適切なタイミングで、段階的に、そして系統的に解消していくことで、候補者は安心して次のステップへ進むことができます。「3接触ルール」は、この心理的なプロセスに基づいています。具体的には、候補者が抱える不安を以下の3つの節目で的確に捉え、解消することを目的としています。
- 応募直後の理解ギャップの解消求人票の情報だけでは、職場の実態は完全には伝わりません。候補者は「本当にこの職場は自分に合っているのだろうか?」という漠然とした不安、つまり理解のギャップを抱えています。最初の接触では、このギャップを埋め、具体的な働くイメージを持ってもらうことが重要です。
- 見学・お試し勤務直前の実務不安の解消見学や勤務の日が近づくにつれて、不安はより具体的・実務的なものへと変化します。「当日、道に迷わずに行けるだろうか」「行ってから気まずい思いをしないだろうか」「業務についていけなかったらどうしよう」といった直前の不安です。2回目の接触は、この実務的な不安をピンポイントで取り除き、安心して来訪してもらうためのものです。
- 体験直後の最終評価における納得感の醸成実際に職場を体験した後、候補者は「ここで働き続けるかどうか」を最終的に評価します。この段階では、業務内容や条件だけでなく、「自分がこの職場で貢献できるか」「一員として受け入れられているか」といった、自己肯定感や所属意識が重要になります。3回目の接触では、体験に対するポジティブなフィードバックを伝え、次のステップへのハードルを下げることで、候補者の心に「ここで働きたい」という理由を腹落ちさせるのです。
実例紹介:3接触ルールで採用成功率が向上したケース
ここでは、「3接触ルール」を導入したことで、見学から実際の稼働に至る割合(コンバージョン率)が顕著に改善した2つの施設の事例をご紹介します。
ケース1:クリニックA(外来・採血業務が中心)
- 導入前の状況(Before)このクリニックでは、応募があれば即日返信し、面接日を設定するという「応募→面接設定→当日」の2接触に近い運用を行っていました。しかし、月に2件ほどのペースで見学のドタキャンが発生しており、採用担当者はその対応に頭を悩ませていました。候補者に理由を尋ねても、「都合が悪くなった」といった曖昧な返答が多く、根本的な原因が掴めない状態でした。
- 導入後の取り組み(After)そこで、以下の3接触ルールを導入しました。
- 接触①(応募当日):応募から15分以内に、SMSとメールの両方で連絡。メールには、一方的な長文ではなく「3分で読める職場紹介」と題した、簡潔な資料を添付しました。内容は、1日の業務の流れを図解したもの、ナースステーションの様子の写真、そして初めて来院する方向けの入口から受付までの簡単な案内図です。
- 接触②(見学前日の夕方):コミュニケーションツールをLINEに切り替え、「明日のご来院、お待ちしております」というメッセージと共に、1枚の画像を送付しました。その画像には、「院内での入室導線」「当日の持ち物(筆記用具、ナースシューズなど)」「使用している電子カルテのメーカー名」「当日案内役の看護師の名前」といった、候補者が直前に抱きがちな細かな不安を解消する情報がまとめられていました。
- 接触③(お試し勤務後48時間以内):お試し勤務を終えた候補者に対し、看護部長から直接お礼のメッセージを送付。「〇〇様が患者様へお声がけする際の笑顔が、とても印象的で素晴らしかったです」といった具体的なポジティブフィードバックを伝えました。そして、「もしよろしければ、次はもう少し長めの時間で、もう一度だけ軽めのお試し勤務をしてみませんか?」と、次回の勤務を2〜3つの候補日時と共に提案しました。長期契約を急がすのではなく、あくまで「次の一回」へのハードルを低く設定したのがポイントです。
- 結果この取り組みの結果、見学のドタキャンは以前の半分以下に減りました。さらに、お試し勤務から継続的なシフト勤務へ移行する候補者の割合が、導入前の約1.5倍にまで向上したのです。
ケース2:病院B(病棟勤務・夜勤専従枠の募集)
- 導入前の状況(Before)この病院は、給与や福利厚生といった条件面では競合に引けを取らない魅力的な求人を出していました。しかし、特に夜勤専従枠の応募者から、「夜勤の具体的な流れが見えず不安」「仮眠はしっかり取れるのか」といった理由での辞退が多発していました。求人票の文字情報だけでは、夜勤という特殊な勤務形態への不安を払拭しきれていなかったのです。
- 導入後の取り組み(After)この課題に対し、夜勤希望者に特化した3接触ルールを設計しました。
- 接触①(応募当日):応募があった日のうちに、「夜勤看護師の一日のタイムライン」と題したPDF資料を送付。そこには、申し送りの時間、受け持ち患者数の目安、ラウンドのタイミング、休憩・仮眠時間の具体的な運用ルール、急変時の応援体制(当直医や他のスタッフとの連携フロー)などが、時系列で分かりやすく記載されていました。
- 接触②(見学前日の夕方):採用担当者がスマートフォンで撮影した、30秒程度の短い動画を送付しました。動画の内容は、夜間のナースステーションの実際の雰囲気、使用している心電図モニターや輸液ポンプなどの医療機器、仮眠室の様子など、候補者が最も知りたいであろう現場のリアルな環境でした。プロが作ったような綺麗な動画である必要はなく、むしろ手作り感のある映像が、職場のありのままの姿を伝え、安心感に繋がりました。
- 接触③(お試し夜勤後):体験勤務を終えた候補者に対して、師長から評価のフィードバックを行いました。特に良かった点(例:「落ち着いて患者様の対応ができていましたね」)を具体的に伝えると共に、「次回もしお試しいただけるなら、〇〇の業務にも挑戦してみませんか?」と、本人のスキルアップにも繋がるような前向きな提案を添えました。そして、長期契約を迫るのではなく、まずは「次の夜勤、もう一回だけ」という形で、お試し勤務の延長を提案しました。
- 結果この丁寧な情報提供と段階的なアプローチにより、夜勤枠への応募者の不安が大幅に軽減され、定着率が目に見えて改善しました。結果的に、高額になりがちな人材紹介会社経由での採用コストを抑制することにも繋がりました。
これらの事例からも分かるように、クーラのような「お試し勤務」を前提としたサービスを利用すると、特に接触③における「次の1回だけ」という提案が、特別な交渉ではなく、ごく自然なプロセスとして候補者に受け入れられます。入職への迷いが強い慎重な候補者ほど、この段階的なアプローチは非常に有効です。
解決アプローチ:平均接触回数を最小で最大効果にする「3接触ルール」
ここからは、「3接触ルール」の具体的な全体像と、各接触で実行すべきアクションを詳細に解説します。このルールの目的は、接触回数をやみくもに増やすことではなく、候補者の心理状態の変化に合わせた最適なタイミングで、最適な情報を届けることにより、最小限の労力で最大の効果を得ることにあります。
このプロセスからも分かるように、クーラを導入している施設では、特に接触③の「次の1回だけ」という提案が非常にスムーズになります。なぜなら、クーラのシステム上、単発の契約、通知、給与支払いのプロセスが標準化・自動化されており、採用担当者様が煩雑な事務手続きに悩むことなく、候補者とのコミュニケーションに集中できるからです。法令を遵守した形で、安心してお試し勤務を延長できるこの仕組みは、採用の最終決定率を高める上で大きな力となります。詳しくはウェブサイト(https://business.cu-ra.net/)をご覧ください。
3接触で活用する“短文テンプレート”集
ここでは、実際のコミュニケーションでそのまま使える、あるいは少しの修正で活用できる短文のテンプレートをご紹介します。ポイントは、相手の時間を奪わない配慮と、次のアクションが明確に分かる簡潔さです。
① 応募当日の連絡(SMSまたはメール)
- SMSでの活用を想定した短文例
ご応募いただき、誠にありがとうございます。〇〇クリニック採用担当の〇〇です。当院では、まず職場の雰囲気をご体感いただくため「有給お試し勤務(3時間〜半日程度)」をおすすめしております。詳細はメールをお送りしましたので、3分ほどお時間をいただけますと幸いです。もしご興味をお持ちいただけましたら、今週は「〇月〇日(火)午後」や「〇月〇日(木)午前」の枠がございます。
- メールでの活用を想定した文面例
件名:【〇〇クリニック】初回“有給お試し勤務”のご案内(内容の確認は3分で完了します)
〇〇様
この度は、当院の看護師募集にご応募いただき、誠にありがとうございます。採用担当の〇〇と申します。
〇〇様にご入職後のミスマッチなく、安心してキャリアをスタートしていただきたいという想いから、当院では選考の初期段階で「有給お試し勤務」の機会を設けております。
ぜひ、実際の職場の雰囲気や業務の流れを体験してみてください。
▼3分でご確認いただける資料です・1日の業務の流れ(画像1枚にまとめています):[画像のリンクまたは添付]・初日の流れ(入口→更衣室→詰所までのご案内):[案内図のリンクまたは添付]・使用している電子カルテ:「〇〇」(メーカー名)
上記をご覧いただき、少しでもご興味をお持ちいただけましたら幸いです。直近でご案内可能なお試し勤務の候補日時は以下の通りです。
・〇月〇日 (火) 14:00〜17:00・〇月〇日 (木) 9:00〜12:00
ご都合はいかがでしょうか。上記以外でも調整可能ですので、お気軽にご希望をお聞かせください。
〇〇様とお会いできることを、スタッフ一同、心よりお待ちしております。
② 見学・お試し勤務の前日連絡(LINEなど、より手軽なツールを推奨)
〇〇様
こんばんは。〇〇クリニックの〇〇です。明日のお試し勤務、どうぞよろしくお願いいたします。
明日、〇〇様のサポートをさせていただくのは、看護師の〇〇です。開始時刻の10分前を目安に、受付左手にある椅子にお掛けになってお待ちください。
万が一、道に迷われたり、ご都合が悪くなった場合は、こちらの番号までご連絡ください:〇〇-〇〇〇〇-〇〇〇〇
その他、細かな点ですが、・個人ロッカー:2階更衣室に入って手前から3番目をご利用ください。・休憩時間:12:30〜13:00を予定しております。
こちらに、受付から詰所までの簡単な案内動画(30秒)をお送りしますね。[動画のリンク]
どうぞ、お気をつけてお越しください。スタッフ一同、〇〇様のお越しを楽しみにしております。
③ 体験後の連絡(まずはメール、必要に応じて電話で補足)
件名:【〇〇クリニック】本日のお礼と、次回お試し勤務のご提案
〇〇様
本日は、お忙しい中、お試し勤務にお越しいただき、誠にありがとうございました。〇〇クリニックの〇〇です。
短い時間ではございましたが、〇〇さんと直接お話しでき、大変嬉しく思います。特に、〇〇さんが患者様にお声がけする際の丁寧な言葉遣いや、穏やかな表情は、他のスタッフからも大変好評でした。
もしよろしければ、〇〇様のご負担にならない範囲で、もう一度だけ、軽めの勤務を体験してみませんか。次回は、本日とは少し違う業務にも触れていただけるよう、準備いたします。
現在、以下の日程で調整が可能ですが、ご都合はいかがでしょうか。
候補1:〇月〇日(金) 9:00〜12:00候補2:〇月〇日(月) 14:00〜17:00
勤務条件は以下の通りです。・時給:〇〇円・交通費:全額支給・給与支払日:月末締め、翌月〇日払い
ぜひ前向きにご検討いただけますと幸いです。〇〇様からの良いお返事をお待ちしております。
チャネル設計:SMS・メール・LINEの効果的な使い分け
候補者とのコミュニケーションを円滑に進めるためには、伝える内容に応じて連絡手段(チャネル)を使い分けることが非常に重要です。それぞれのツールの特性を理解し、戦略的に活用しましょう。
クーラのようなプラットフォームを併用する利点の一つは、これらのコミュニケーションがある程度システム内で一元管理できる点にあります。応募者とのメッセージのやり取り、日程調整、契約書面の締結、給与の支払い通知までが一連の流れとしてシステムに組み込まれているため、採用担当者様が行うべき「追い連絡」や事務作業が大幅に削減されます。その結果、本来最も注力すべき、候補者の心に寄り添う「3接触の中身」そのものに、より多くの時間とエネルギーを割くことが可能になります。
「3接触ルール」を崩さずに運用するためのコツ
このルールを形骸化させず、継続的に成果を出すためには、いくつかの運用上のコツがあります。
- 時間帯を意識して固定化する連絡のタイミングは非常に重要です。接触①は応募者の熱意が最も高い「15分以内」、接触②は翌日の準備を始める「前日17時〜19時」、接触③は記憶が鮮明な「48時間以内」というように、各接触のタイミングをチーム内のルールとして固定化しましょう。これにより、対応のばらつきを防ぎます。
- 情報は「画像1枚主義」を心がける多忙な看護師は、長文のテキストを読む時間を確保するのが難しい場合があります。伝えたい情報は、可能な限り図や写真、シンプルな箇条書きにまとめ、「画像1枚」で直感的に理解できるように工夫しましょう。文字はあくまで補足と捉え、視覚的な分かりやすさを最優先します。
- 各接触の終わりには、必ず次の行動を提示するコミュニケーションの最後は、必ず「〇日と〇日はいかがですか?」といった具体的な選択肢で締めくくりましょう。相手に「さて、どう返信しようか」と考えさせる時間を与えず、「選ぶだけ」の状態にすることで、返信率が格段に上がります。
- 不在・未読時のバックアッププランを用意しておく連絡をしても、相手からの反応がないケースも想定しておく必要があります。例えば、接触②の前日連絡(LINE)が既読にならない場合は、念のためSMSでも「LINEをご確認ください」と短いメッセージを送る。接触③のメールに返信がない場合は、翌日に一度だけ「メールをご覧いただけましたでしょうか」と短い電話をかける。このように、バックアップの動線をあらかじめ決めておくことで、機会損失を防ぎます。
よくある質問(現場で想定される疑問や抵抗を解消するために)
Q1. 3回も連絡をすると、候補者から「しつこい」と思われないでしょうか?
A. 非常に良いご質問です。接触の目的が重要になります。もし連絡の内容が、こちらの都合を押し付けるような催促や、候補者の役に立たない雑談であれば、それは「しつこい」と感じられるでしょう。しかし、「3接触ルール」で送る内容は、すべて「候補者が抱える直前の不安を解消するための情報」と「次のステップへの負担を軽くする提案」に限定されています。候補者の利益になる、役に立つ具体的な情報提供に徹すれば、むしろ「丁寧で親切な施設だ」という安心感や好印象に繋がります。一方的なプッシュではなく、相手への配慮に基づいたコミュニケーションであることを意識してください。
Q2. 採用業務も忙しく、すべてを自動化して効率を上げたいのですが。
A. お気持ちはよく分かります。可能な限り効率化すべきです。接触①の応募直後の返信と資料送付は、定型文をテンプレート化しておくことで、ほぼ自動的に対応可能です。しかし、接触②の前日の連絡だけは、テンプレートを使いつつも、必ず人の手で「〇〇様、明日はお待ちしております」といった一言を添えることを強くお勧めします。この僅かなパーソナライズが、候補者に「自分は一人の個人として大切にされている」と感じさせ、効果を格段に高めます。クーラの管理画面には、定型メッセージと画像を保存しておく機能がありますので、これを活用すれば、心のこもった一通を30秒ほどで送信できます。
Q3. 応募があってから見学までの期間(リードタイム)が1週間以上空いてしまう場合、離脱のリスクはありませんか?
A. はい、リードタイムが長くなるほど、候補者の関心が薄れ、離脱のリスクは高まります。だからこそ、その「中日」を埋めるための接触が非常に効果的になります。例えば、応募から見学まで1週間空くのであれば、中間の3〜4日目に、「職場の雰囲気が少しでも伝わればと思いまして」という一言を添えて、スタッフが談笑している様子の写真や、先述した「入口〜更衣室〜詰所」の30秒動画を送るのです。このような接触が一本あるだけで、候補者の貴院に対する記憶がリフレッシュされ、安心感を維持することができます。
Q4. 連絡チャネルが多様化すると、管理が煩雑になりませんか?
A. 確かに、複数のチャネルを使うと情報が散在するリスクはあります。重要なのは、各チャネルの役割を明確に定義し、チーム内で共有することです。例えば、「正式な条件提示や記録に残すべき内容は必ずメール」「日程調整やリマインドはLINE」「緊急連絡は電話」といったルールを設けます。また、候補者ごとに、いつ、どのチャネルで、何を連絡したかを簡潔に記録するシート(スプレッドシートなどで十分です)を用意しておくと、複数名の担当者がいても混乱なく対応できます。クーラのようなプラットフォームは、候補者とのやり取りが一元的に記録されるため、こうした管理の手間を大幅に軽減する一助となります。
「3接触ルール」と、お試し勤務(クーラ)の相乗効果
これまで解説してきた「3接触ルール」は、それ単体でも採用プロセスの改善に大きく貢献しますが、クーラが提供する「お試し勤務」の仕組みと組み合わせることで、その効果を最大化することができます。
- 面接という心理的ハードルの解消従来の採用では、「面接」が最初の大きな関門でした。しかし、候補者、特に現場復帰を考える潜在看護師層にとっては、面接自体が高いハードルに感じられることがあります。「まずは1回働いてみて、それから続けるかどうかを決める」という選択肢は、候補者の心理に非常に合致しており、応募へのハードルを大きく下げます。
- 入職後のミスマッチの抑制面接や見学だけでは分からない、現場のリアルな雰囲気、人間関係、使用している医療機器の操作性、コミュニケーションの取り方などを、実際の業務を通じて事前に確認できます。これにより、「こんなはずではなかった」という入職後の早期離職を防ぎ、長期的な定着に繋がります。
- 採用決定までのスピード向上従来の採用プロセスでは、内定後に雇用契約書の取り交わしや給与振込口座の確認など、多くの紙ベースのやり取りが発生し、時間がかかっていました。クーラでは、これらの契約手続きや給与支払いのプロセスがシステム上で完結するため、採用担当者様の事務的な負担を軽減し、候補者が稼働を開始するまでの時間を短縮できます。
- 短期から長期への自然な移行「3接触ルール」の接触③で「次の1回」を提案し、それを2回、3回と重ねていく中で、候補者と職場の双方が、互いの相性をじっくりと見極めることができます。これにより、無理に長期契約を迫ることなく、双方の合意形成が自然に進み、納得感の高い状態で長期的な雇用へと移行することが可能になります。
「まずは1回から4回の、軽めのお試し勤務から始めませんか?」という提案と、「3回の丁寧な接触による不安の除去」というアプローチ。この2つの組み合わせは、特に「応募はあるのに、なかなか採用決定に至らない」という課題を抱える施設にとって、非常に有効な処方箋となります。クーラの導入プロセスは非常にシンプルです。
- まず、クーラに施設アカウントを無料で作成します。
- 次に、「お試し勤務」を前提とした求人情報を公開します。
- そして、応募が入ったら、本稿でご紹介した「3接触ルール」を運用する。
たったこれだけです。詳細な情報や導入に関するご相談は、こちらのページからお気軽にお問い合わせください: https://business.cu-ra.net/
失注・辞退を減らす「細部の勝ち方」チェックリスト
最後に、自院の採用プロセスを客観的に見直すためのチェックリストをご用意しました。一つ一つの項目は些細なことかもしれませんが、この「細部」の積み重ねが、最終的に採用の成否を分けます。
ミニケース:接触回数は、増やせば良いというわけではありません
ここで注意すべきは、「接触は多ければ多いほど良い」というわけではない、ということです。例えば、候補者に対して毎日リマインドのメッセージを送ったり、関係のない院内のニュースレターや長文のコラムを送りつけたりするような過剰な接触は、逆効果になる可能性があります。大切なのは、接触の「量」ではなく、「タイミング」と「内容」が候補者の心理状態に適合しているかどうかです。
- 許容される接触の例:前日の夕方にリマインドを送った上で、当日の朝に「本日はお気をつけてお越しください。万が一迷われた場合はこちらへ」といった、“道に迷った際の対策”に特化した自動送信のSMSを送る。
- 避けるべき接触の例:候補者の関心とは関係のない院内イベントの告知や、一方的な長文のメッセージを何度も送付する。
「3接触ルール」は、あくまでも候補者の不安を解消するために必要な、最小限の接触回数として設計されています。重要なのは、一回一回の接触の「濃度」で勝負することなのです。
まとめ:採用プロセスは、平均接触回数「3回」で整える
本稿でお伝えしてきた内容を、最後に要点としてまとめます。応募はあるのに採用が決まらないという課題は、候補者との接触の「タイミング」と「内容」を見直すことで、大きく改善する可能性があります。
- 応募当日(接触①):3分で職場の魅力と実態が理解できる情報(業務の解像度を上げる資料、現場写真、初日の動線)を迅速に提供する。
- 見学・お試し勤務の前日(接触②):候補者の不安がピークに達するタイミングで、物理的・心理的な障壁を取り除く(入口からの案内、緊急連絡先、持ち物、30秒程度の案内動画)。
- 体験後(接触③):記憶が新しいうちに、感謝とポジティブなフィードバックを伝え、次のステップへのハードルを下げる提案(お礼、良かった点の指摘、日時候補を2〜3提示、条件の明確化)を行う。
この3つの節目を丁寧に押さえるだけで、見学のドタキャン、体験後の連絡途絶、そして内定辞退といった、採用担当者様を悩ませる多くの問題を減らす効果が期待できます。
そして、この「3接触ルール」の効果を最大化するパートナーとなるのが、クーラの「お試し勤務」という仕組みです。接触③における「次の1回だけ」という提案が、特別な交渉ではなく、ごく自然なプロセスとして機能し、候補者が安心して次のステップに進むことを後押しします。結果として、採用の決定率そのものを底上げすることに繋がります。
クーラへの掲載は無料から始めることができます。まずは1つの求人案件だけでも公開し、今週入った応募に対して、この記事でご紹介した「3接触ルール」を試してみてはいかがでしょうか。小さな一歩が、貴院・貴施設の採用活動を大きく変えるきっかけになるかもしれません。
導入・掲載に関するご相談はこちらから: https://business.cu-ra.net/
付録:運用をすぐに始めるための“ひな型”まとめ
最後に、明日からすぐにでも活用いただける、各接触場面でのメッセージのひな型を再掲します。これらをベースに、自院の特色に合わせてカスタマイズしてご活用ください。
A. 初動メッセージ(SMS用・120字以内目安)
ご応募ありがとうございます。〇〇クリニック採用担当です。初回は、職場の雰囲気を知る「有給お試し勤務(半日〜)」をおすすめしています。3分で見られる職場紹介をメールで送りましたのでご確認ください。今週の候補枠は〇/〇(火)午後・〇/〇(木)午前です。
B. 初動メール(画像1枚+短文)
件名:【〇〇病院】初回“有給お試し勤務”のご案内(3分でご確認いただけます)
本文:〇〇様この度はご応募いただき誠にありがとうございます。実際の業務や雰囲気を知っていただくため、初回のお試し勤務をおすすめしております。
・当日の流れ:[こちらの画像1枚]でご確認いただけます。・使用カルテ:〇〇電子カルテ・受け持ち目安:〇〜〇名程度・更衣室から詰所までのご案内:入口左手の階段を上がり、2階のロッカーをご利用ください。
今週の“軽めのお試し勤務”候補日時・〇月〇日(火) 14:00〜17:00・〇月〇日(木) 9:00〜12:00
ご検討いただけますと幸いです。
C. 前日の連絡(LINE推奨)
〇〇様、こんばんは。明日の担当は看護師の〇〇です。こちらに入口の写真と、更衣室から詰所までの30秒動画を共有しますね。[写真・動画の添付]
万が一迷われた場合は、こちらの番号へご連絡ください:〇〇-〇〇〇〇-〇〇〇〇
開始10分前を目安に、受付左手の椅子でお待ちください。ロッカーは2階の手前から3番目です。明日お会いできるのを楽しみにしております。
D. 体験後のメール(48時間以内)
件名:【〇〇クリニック】本日のお礼と「次の1回」候補日のご提案
本文:〇〇様本日はお試し勤務、誠にありがとうございました。〇〇様が〇〇の対応をされていた際の、患者様への丁寧な接し方がスタッフの間でも大変参考になりました。
もしよろしければ、ご負担の少ない範囲で、もう一度だけ“軽めの勤務”をお試しになりませんか?
・候補日時:〇月〇日(金)午前、または〇月〇日(月)午後・勤務条件:時給〇〇円、交通費は全額支給、給与は〇日に支払いとなります。
〇〇様のご都合の良い方をお選びいただければ幸いです。ご検討のほど、よろしくお願いいたします。
まずは1週間、この「3接触ルール」を厳密に運用してみてください。きっと、候補者の反応がこれまでと違うことを、肌で感じていただけるはずです。