はじめに:内定辞退が発生する背景について
採用活動を進め、採用したいと考えた人材に内定を出したにもかかわらず、承諾に至らないケースがあります。内定辞退は、候補者のスキルや待遇そのものよりも、採用プロセスにおけるいくつかの要因に起因することがあります。
具体的には、「連絡速度」「条件提示」「見学・体験の進め方」という3つの点が挙げられます。看護職は求職者側に有利な市場環境が続いており、一人の候補者が同時に複数の医療機関から内定を得ることも少なくありません。
このような状況下で、病院側の対応が「遅い」「わかりにくい」「働くイメージが湧きにくい」といった印象を与えた場合、候補者が他院を選ぶ可能性が高まります。
この記事では、内定辞退率の改善を検討する際に、初期段階で見直すべき3つの点について、現場で実施可能な具体的な取り組みを解説します。また、その過程で「お試し勤務」を設計できるサービス『クーラ(Cura)』が、これらの課題解決にどのように寄与するかについても触れていきます。
背景:採用市場のデータから現状を把握する
採用プロセスの見直しを検討する上で、まず現在の市場環境をデータから見ていきます。
- 看護職の需給状況と採用競争厚生労働省などの調査によると、看護職(保健師・助産師・看護師)の平均有効求人倍率は2倍を超える水準で推移しています。これは、採用枠に対して求職者の数が少ない状態を示しており、特に転職活動が活発になる時期には競争がより一層激しくなる傾向があります。この環境下では、「迅速、明瞭、安心感」のある採用体験を提供することが、他院との比較において重要になると考えられます。
- 職場への定着とミスマッチの関連性日本看護協会の調査では、病院看護職員の離職率は一定の水準で推移しています。求職者側には「入職後のミスマッチを避けたい」という意向が強くあり、採用プロセスの中で不安や疑問が十分に解消されない場合、内定の承諾をためらう一因となる可能性があります。
- 採用市場全体の傾向新卒採用市場全体を見ても、内定辞退は一つの課題として認識されています。業種を問わず、連絡の遅れや不明瞭な条件提示が、辞退や選考離脱の理由として挙げられることが多く、これは看護業界に限った話ではありません。
- 採用にかかるコスト人材紹介会社を利用する場合、一般的に採用決定者の年収の一定割合を成功報酬として支払います。内定辞退が発生し、再度募集や選考を行うことになれば、その分だけ時間と費用が追加でかかることになります。そのため、内定辞退を減らすことは、結果的に採用コストの抑制にもつながります。
実例:採用プロセスにおける一般的な傾向と改善策
ここでは、多くの病院で見られる状況(改善前)と、その改善策(改善後)を具体的に紹介します。
解決アプローチ:3つの改善点に関する具体的な方法
ここからは、3つの点について、具体的な取り組みを解説します。
1. 連絡速度 ― 初期対応の重要性
候補者への最初の連絡や日程提案の速さは、選考プロセス全体に影響を与えます。各種調査では、多くの候補者が24時間以内の返信を期待しているというデータもあり、対応の遅れが選考離脱の一因となる可能性が指摘されています。
<現場でできる取り組みの例>
- 応募から30分以内の一次連絡:自動返信と並行し、担当者から「内容を確認の上、改めてご連絡します」という旨の一報を入れる。
- 二手先の提案:面談の候補日を提示する際に、「ご希望でしたら、面談後に短時間の見学も可能です」と次のステップを合わせて提案する。
- 連絡手段の選択:電話、SMS、メールなど、候補者が確認しやすい方法を優先する。
- 返答期限の明示:「この日程は48時間確保いたします」のように、期限を伝えることで、次の行動を促す。
- 担当者不在時の対応:誰でも一次連絡ができるテンプレートと、次のアクションをまとめた手順を共有しておく。
クーラは、応募時の自動連絡や日程調整機能を備えており、「面接なしでお試し勤務から」という柔軟な選考フローを組むことも可能で、プロセス全体の時間短縮に貢献します。
2. 条件提示 ― 明瞭さと具体性
内定辞退の背景には、「提示された条件への不安や疑問」が存在することがあります。この点を解消するためには、選考の早い段階で「給与総額の目安と働き方の実態」を伝え、内定時には「労働条件の要点をまとめた書面」を提示することが有効です。
<初期段階で提示すると効果的な情報>
- 給与の目安:時給や日給に加え、夜勤回数に応じた月収シミュレーション(各種手当込み)を例示する。
- 働き方の実態:直近のシフト実績(早番・遅番・夜勤の回数分布など)を開示する。
- 担当業務の範囲:「救急外来の担当なし」など、業務範囲を具体的に明示する。
- 柔軟な働き方の可否:遅番固定勤務など、個別の相談に応じられる範囲を伝える。
<内定時に提示する書面の項目例>
- 就業場所、主な業務内容
- 勤務形態(例:短期お試し勤務を経て、双方合意の上で本採用へ)
- 給与、手当、交通費(月収の総額目安)
- 休憩、残業、深夜勤務の取り扱い
- 試用期間や契約更新、相談窓口
なお、労働条件の明示は法律で義務付けられており、2024年4月からは明示事項も変更されています。初期段階から書面を準備しておくことは、法令遵守の観点からも推奨されます。
クーラでは、労働条件通知書にも応用可能なテンプレートを用いて候補者とやり取りができます。これにより、条件提示の明確化と合意形成の円滑化をサポートします。
3. 見学・体験の進め方 ― 職場理解の促進
入職前に、仕事の実際的な情報を得る機会を提供することは、入職後のミスマッチを防ぐ上で有効とされています(リアリスティック・ジョブ・プレビュー)。看護領域においても、現場に近い情報を事前に体験してもらうことの重要性が指摘されています。
<見学・体験を設計する際の視点>
- 見学ルートの定型化:「受付→スタッフステーション→休憩室」など、30分程度の見学ルートをあらかじめ決めておく。
- 体験シフトの事前確保:応募から72時間以内に参加できるような、短時間(例:4時間×1回)の体験シフト枠を常に用意しておく。
- 見学キットの準備:当日の流れや確認事項をまとめた簡単な資料を用意する。
- 現場の案内役:先輩職員を案内役として固定し、職場の雰囲気や仕事の流れを説明してもらう。
- オンラインでの代替手段:遠方の候補者向けに、職場を紹介する5分程度の動画を用意しておく。
クーラは、「数日間のお試し勤務」を契約面も含めて設計できる点が特徴です。面接を重ねるだけでなく、短時間でも実際に働いてもらうことで、候補者の職場理解を深め、納得感のある意思決定を支援します。
具体的なアクションプラン:今日から始められる9つの項目
ここまでの内容を、実践的な9つの項目にまとめました。
まとめ:採用プロセス全体の改善に向けて
内定辞退が続く場合、給与や手当といった条件面の見直しだけでなく、「連絡速度・条件提示・見学導線」という採用プロセス全体を候補者の視点から見直すことが、状況の改善につながる場合があります。
このアプローチは、大きな費用をかけずに実施できる点に特徴があります。特に、人材紹介会社を利用している場合、内定辞退を一件減らすことは、採用コストの削減に直接的につながります。
もし、具体的な取り組みについてさらに情報が必要な場合は、「体験」を軸とした採用フローを小規模で試してみるのも一つの方法です。
『クーラ』の活用について:
- 納得感の醸成:数日間の有給お試し勤務を通じて、候補者のミスマッチへの不安を緩和します。
- 採用プロセスの効率化:応募から体験までをシステムで一元管理し、迅速な対応を支援します。
- 明確な条件提示:給与や働き方のイメージを、選考の初期段階から明確に提示するための仕組みを提供します。
- 効果検証:まずは少数の体験シフト枠から始め、内定承諾率の変化を確認することが可能です。
「内定辞退が多い」という状況は、採用プロセスを見直す良い機会と捉えることもできます。院内の負担を考慮しつつ、候補者の職場理解を深めるための小さな一歩が、結果として内定承諾率や職員定着率の改善につながる可能性があります。
ご興味があれば、「クーラ 施設向け」で検索、または公式サイト(business.cu-ra.net)をご覧ください。
(参考・出典)
- 看護職の有効求人倍率・採用動向:マイナビ業界レポート、厚生労働省公開資料
- 病院看護職員の離職率:日本看護協会「病院看護実態調査」
- 連絡速度と内定承諾率の関係:各種候補者体験調査、学術研究
- 労働条件明示ルール(2024年改正):厚生労働省
- 人材紹介手数料の相場:各種業界レポート