なぜ“三交代”は敬遠されるのでしょうか

「新しい人を募集してもなかなか応募がない」「採用してもすぐに辞めてしまう」。三交代制を導入している施設の採用や労務の担当者の方から、このような相談をいただくことがあります。三交代勤務は、看護師の働き方として長く採用されてきた歴史がありますが、近年、特に若い世代の看護師からは敬遠される傾向がある、という声も聞かれます。

しかし、統計上のデータを見てみると、意外な事実が浮かび上がってきます。例えば、日本看護協会が実施した調査の結果を分析した情報によると、1回の勤務が16時間以上におよぶ「二交代制」のほうが、三交代制よりも離職率が高いという報告もあります。

このことは、三交代という制度そのものが一方的に悪いわけではない可能性を示唆しています。問題の核心は、制度そのものよりも、実際の現場での「運用方法」にあるのかもしれません。つまり、現場で働く看護師一人ひとりが感じる「体感」と、制度の建付けとの間に生じるズレこそが、不満や離職の大きな原因となっているのではないでしょうか。

この記事では、三交代勤務がなぜ敬遠されがちなのか、その背景にある看護師の「体感」に焦点を当て、具体的なズレの要因を一つひとつ分解していきます。そして、小規模な病院や有床診療所、訪問看護ステーション、介護施設など、様々な現場で導入しやすい勤務体制の代替案や、すぐに求人票などに活用できる具体的な文例もあわせてご紹介します。

日々の人材確保に悩む管理者の方々にとって、現状を打開するための一助となれば幸いです。また、状況に応じて、必要な時だけスポットや短期で夜勤スタッフを補充するといった柔軟な運用も選択肢の一つです。もしご興味があれば、「クーラ」の法人様向けサービス(https://business.cu-ra.net/)で、詳しい情報をご覧いただけます。

背景にある課題:データが示すことと、現場が感じていること

三交代勤務をめぐる課題を考えるとき、客観的なデータと、現場で働く人々の主観的な感覚、その両方に目を向けることが大切です。

まず、データに目を向けてみましょう。公益社団法人日本看護協会が2019年に実施した「看護職員の労働実態調査」では、夜勤・交代制勤務の形態と離職率との関連が分析されています。この調査報告を基にした二次的な情報によれば、夜勤1回あたりの時間が16時間以上となる「二交代制」のみで勤務している看護師の離職率が最も高く、一方で「三交代制」のみで勤務している看護師の離職率は、それよりも低い傾向が見られました。このデータは、単純に「三交代だから離職しやすい」とは言い切れないことを示しています。制度の形式だけで有利・不利を判断するのは、少し早いのかもしれません。

一方で、現場で働く看護師が何を感じているのか、という視点も欠かせません。日本看護協会は、看護師の健康と安全を守るために「夜勤・交代制勤務に関するガイドライン」を策定しています。このガイドラインでは、心身の疲労が過度に蓄積することを防ぐための具体的な基準がいくつも示されています。

例えば、勤務終了から次の勤務開始までの時間、いわゆる「勤務間インターバル」は11時間以上空けることが強く推奨されています。また、1回の勤務における拘束時間は13時間以内とすること、1ヶ月の夜勤回数や連続して夜勤に入る回数にも上限を設けることなどが明記されています。

問題は、多くの現場で、こうしたガイドラインに沿った勤務シフトを組むことが困難になっている現実です。人手不足や緊急対応の多発といった理由から、勤務間インターバルが十分に確保できなかったり、休憩時間が名ばかりのものになってしまったりするケースは少なくありません。結果として、看護師は「しっかり休めた実感がないまま、次の勤務が始まってしまう」という慢性的な疲労感を抱えることになります。

つまり、三交代制が嫌われる本当の理由は、「三交代だから」という一言で片付けられるものではないようです。むしろ、準夜勤務が終わって数時間後に深夜勤務が始まるような、心身への負担が大きい「逆循環」のシフトが組まれていたり、勤務と勤務の間隔が短すぎたり、ゆっくり体を休められる仮眠の環境が整っていなかったり、あるいは、日勤者から準夜勤者へ、準夜勤者から深夜勤者へと繰り返される過密な申し送りが負担になっていたり、といった具体的な「運用の粗さ」が、働く人々の「体感としてのつらさ」を生み出していると考えられます。

看護師が三交代勤務を避ける「体感」の要因

制度そのものの良し悪しよりも、日々の運用の中で生まれる「ズレ」が、看護師の負担感を大きくしているようです。ここでは、現場でよく聞かれる三交代勤務に対する具体的な不満や負担感を、10のポイントに整理して見ていきます。

1

勤務と勤務の間隔が短い

準夜勤務が深夜に終わり、翌朝早くに出勤する「早出」が組まれているなど、心身を回復させるための時間が十分に取れないケースです。日本看護協会のガイドラインでは11時間以上のインターバルが推奨されていますが、これを下回ると疲労が抜けきらないまま次の仕事に向かうことになります。

2

生活リズムを乱す「逆循環」

日勤→深夜勤→準夜勤のように、勤務時間が後ろ倒しではなく前倒しになるシフトは「逆循環」と呼ばれ、体内時計を調整するのが非常に難しいとされています。ガイドラインでは、日勤→準夜勤→深夜勤という「正循環」が推奨されています。

3

申し送りの負担感

三交代制では、日勤から準夜勤へ、準夜勤から深夜勤へと、1日に2回の申し送りが発生します。これが二重の負担に感じられたり、伝達ミスへの心理的なプレッシャーになったりすることがあります。勤務体制を工夫して申し送りの回数を減らした結果、業務効率が改善したという事例も報告されています。

4

仮眠や休憩が取りにくい環境

ナースステーションの椅子でうとうとするだけだったり、物置のような部屋で仮眠を取らざるを得なかったりと、休憩環境が整っていないと心身の回復は望めません。プライバシーが守られ、静かで暗い個室の仮眠室を整備した施設では、職員の満足度が向上したという話も聞かれます。

5

通勤回数の多さ

例えば準夜勤務の翌日が日勤の場合、一度帰宅して短い睡眠をとり、またすぐに出勤することになります。1日に2回往復するような感覚になり、家事や育児といった家庭生活との両立が難しくなります。

6

夜勤明けの拘束

深夜勤務が終わった後、そのまま研修や委員会、会議などに出席しなければならないケースです。ガイドラインでは、夜勤後の十分な休息を確保するよう求めていますが、これが守られないと、貴重な休日が潰れてしまいます。

7

シフトの不公平感

負担の大きい遅い時間帯の勤務や夜勤が特定の人に偏ったり、希望した休みがなかなか取れなかったりすると、職員の間に不公平感が生まれます。これは介護領域の離職要因としても指摘されており、看護の現場でも同様の課題が見られます。

8

8時間勤務の断片化

三交代の8時間という勤務時間は、業務が細切れになりがちで、「一つの仕事をやりきった」という達成感が得にくい、と感じる人もいるようです。特に忙しい業務の中では、あっという間に時間が過ぎてしまい、達成感よりも疲労感が上回ることがあります。

9

家庭生活との両立の難しさ

子どもの保育園の送迎時間や学校行事など、一般的な家庭生活のリズムと、三交代の不規則な勤務時間がうまくかみ合わないことは、特に子育て世代の看護師にとって大きな悩みとなります。

10

「安全な制度」と「不規則な生活」のギャップ

理論上は「8時間勤務で体に優しい」とされる三交代制ですが、実際の運用次第では、生活全体が不規則になり、結果として心身の負担が大きくなる、というギャップが生まれます。

ここで挙げたような「体感」レベルでの課題は、勤務制度を二交代制にするか、三交代制にするか、という形式の選択そのものよりも、日々のシフトの「組み立て方」を少し工夫するだけで、大きく和らげられる可能性があります。

小規模な施設でも実現できた「生活に寄せる」工夫の具体例

看護師の「体感」に寄り添った勤務体制は、大規模な病院でなければ実現できないわけではありません。比較的小規模な施設でも、知恵と工夫で働きやすい環境を実現している事例が報告されています。ここでは、現場の生活実態に合わせた柔軟な取り組みをいくつかご紹介します。

1. 病棟内で「ミックス勤務」を試行し、徐々に拡大

愛知県にある南医療生活協同組合の総合病院南生協病院では、職員の多様な働き方のニーズに応えるため、一つの病棟の中で従来の三交代制と、12時間程度の変則二交代制を併用する「ミックス勤務」を導入した事例があります。

この取り組みで注目すべきは、職員自身が自分のライフスタイルに合わせて勤務形態を選べるようにした点です。導入にあたっては、まず夜勤の負担を軽減するため、男女別の仮眠室をしっかりと整備することから始めました。そして、最初は一つの病棟から試行的にスタートし、職員の反応を見ながら徐々に対象を拡大していったのです。結果として、二交代制を選択する職員が7割、三交代制を選択する職員が3割というバランスに落ち着いたと報告されています。このように、スモールスタートで始めることで、現場の混乱を最小限に抑えながら、制度の移行を進めることができます。

2. 「同一病棟での勤務形態選択制」を導入したモデル事業

日本看護協会が推進する「看護職の働き方改革推進事業」の中でも、多様な勤務形態を組み合わせる実践が報告されています。例えば、あるモデル事業に参加した病院では、同じ病棟内で二交代制と三交代制を選べるようにしたほか、1日の勤務時間を短くした「短時間正職員制度」を導入したり、個々の事情に合わせて夜勤の回数を制限したりするなど、複数の選択肢を組み合わせることで、看護師が働き続けやすい環境を整えました。こうした取り組みは、特に子育てや介護など、家庭との両立を目指す看護師にとって、大きな安心材料となります。

3. 三交代制から二交代制への移行で、業務改善と採用増を実現

静岡県にある社会医療法人明陽会・I病院(現・平成記念病院)の事例では、従来主流だった三交代制から、16時間夜勤の二交代制へと勤務体系を大きく転換しました。この変更により、日勤から準夜勤、準夜勤から深夜勤へと2回あった申し送りが1回に減り、結果として情報伝達のミスが減少したとされています。

さらに、勤務体制の変更をPRしたところ、看護師の応募者が増加し、離職率の低下にもつながったという効果が報告されています。この事例で興味深いのは、単に制度を変えただけでなく、管理職が率先して時間内に仕事を終えて帰る「定時退社」を徹底するなど、職場全体の文化を変える取り組みを同時に進めた点です。制度と文化の両面からアプローチすることが、改革を成功させる鍵と言えるかもしれません。

4. 訪問看護における「夜間オンコール」の負担を軽減する工夫

24時間体制で在宅療養を支える訪問看護ステーションでは、夜間の緊急呼び出しに対応する「オンコール」が職員の大きな負担となりがちです。そこで、多くの事業所が負担軽減のための工夫を凝らしています。

例えば、オンコール当番を一人に任せるのではなく、複数の看護師でチームを組んで対応する体制を整えたり、夜間に緊急出動した職員が、翌日の勤務開始時間を遅らせたり、半日休暇を取得できるようにシフトを調整したりする仕組みが導入されています。また、深夜の移動の安全を確保するためにタクシーの利用を認めたり、遠方の利用者宅へ訪問した後に事業所へ戻るのが困難な場合に備えて、仮眠できる宿泊室を用意したりするなどの取り組みも見られます。

5. 有床診療所における夜間体制の明確化

地域医療を支える有床診療所(ベッド数が19床以下の医療機関)では、夜間の看護師配置が重要な課題となります。診療報酬の「夜間看護配置加算」といった制度を取得するためには、看護師を含む2名以上の夜勤体制を組む必要がありますが、小規模な施設では人員確保が難しい場合もあります。

そのため、求人を行う際には、夜勤は最低1名体制が基本であること、加算を取得している日は看護師を含む2名体制になることなど、具体的な体制をあらかじめ明記しておくことが、応募者とのミスマッチを防ぐ上で重要です。また、緊急時に備えて、すぐに駆けつけられる医師や看護師のオンコール体制を整備しておくことも、夜勤者の安心につながります。

ここで紹介したような「生活に寄り添う」設計は、必要な日時だけ短期・単発で勤務できる外部の看護師と組み合わせることで、より導入しやすくなります。例えば、常勤スタッフの希望休が重なる日だけ、あるいは新しい勤務体制への移行期間中の人員不足を補うために、外部の人材を活用するのです。クーラに登録している看護師は、こうした柔軟な働き方を希望する方が多く、必要な時に必要なだけ力を借りるという運用も可能です。詳しくは、こちらのサイト(https://business.cu-ra.net/)をご覧ください。

二交代と三交代、どちらが離職率を下げるのか?

結局のところ、二交代制と三交代制、どちらのほうが看護師の定着につながるのでしょうか。この問いに対する答えは、残念ながら「こちらが良い」と一概に言えるものではありません。「どちらの制度を選ぶか」よりも、「その制度をどのように設計し、運用するか」が重要である、というのが実情に近いようです。

二交代制と三交代制:設計思想の比較

二交代制(例:16時間夜勤)

  • 期待される利点:休日の確保がしやすいとされています。夜勤明けの日とその翌日が休みになるため、まとまった休息時間が取れます。通勤回数が減る点も、生活上のメリットと感じる人がいます。
  • 運用の留意点:1回の勤務時間が長いため、勤務時間中の疲労が大きくなりやすい傾向があります。特に、十分な仮眠時間(例えば2〜3時間)と、横になって休める仮眠環境の確保が不可欠です。
  • 離職との関連:日本看護協会の調査を基にした分析では、16時間以上の長時間夜勤を行う二交代制は、他の勤務形態に比べて離職率が最も高いという結果が示されています。これは、長時間の拘束による心身の負担が影響している可能性を示唆しています。

三交代制(例:8時間勤務)

  • 期待される利点:1回の勤務時間が8時間と短いため、勤務中の身体的な負担は比較的軽いとされています。理論上は、日々の生活リズムを保ちやすいと考えられています。
  • 運用の留意点:勤務と勤務の間隔が短くなりやすく、特に準夜勤務から深夜勤務への「逆循環」は、体内時計を大きく乱すと指摘されています。通勤回数が増え、生活が不規則になりがちです。
  • 離職との関連:データ上は、三交代制のみの職場の離職率は比較的低いとされています。ただし、これはあくまで「丁寧な設計がされている場合」に限られると解釈するのが適切です。勤務間隔の確保や正循環の徹底といったガイドラインの遵守が、定着の鍵となります。

結論として、重要なのは制度の名称ではなく、「いかにして看護師の疲労蓄積を防ぐか」という視点に基づいた具体的なシフト設計です。日本看護協会のガイドラインが示す「勤務間インターバル11時間以上」「1回の拘束時間は13時間以内」「夜勤回数や連続回数の上限設定」「正循環の遵守」といった原則は、二交代制・三交代制のどちらを採用するかにかかわらず、守るべき基本となります。

つまり、二交代制を選ぶのであれば、長時間の勤務に耐えられるよう、質の高い仮眠と休憩を保証する仕組みが不可欠です。三交代制を選ぶのであれば、勤務間のインターバルを十分に確保し、生活リズムを崩さないシフトの組み方が求められます。

最終的には、制度の看板にこだわるのではなく、勤務間隔、仮眠環境、シフトの連続性、そして職員間の公平性といった「具体的な運用」に目を向けることが、働きやすい職場づくりの本質と言えるでしょう。

すぐに使える代替案のプリセット文例集

自施設の状況に合わせて、求人票や就業規則、職員への説明資料などに、そのまま、あるいは一部を修正してご活用いただける文例を用意しました。これらの文例は、看護師が職場を選ぶ際に重視する「働き方の具体性」や「生活への配慮」を明確に伝えることを目的としています。

A. ミックス勤務(同一病棟で二交代・三交代の選択制)

職員一人ひとりの希望やライフステージに応じて、働き方を選べる柔軟性をアピールします。

【求人票への記載例】
夜勤体制は、ご自身のライフスタイルに合わせて「二交代制」と「三交代制」から選択することが可能です。勤務シフトを作成する際は、勤務終了から次の勤務開始まで11時間以上を確保することを原則とし、生活リズムを崩しにくい「正循環」で編成します。仮眠については、連続して90分以上を確保できる男女別の仮眠室を完備しています。月の夜勤回数も、個々の希望(例:月2回〜6回など)を申告できる制度を整えています。
【就業規則・内規の参考文言】
夜勤の勤務形態(二交代制または三交代制)は、職員本人の希望に基づき、半年ごとに見直しを行うものとする。シフト編成においては、準夜勤務の翌日に深夜勤務を割り当てる「逆循環」の勤務を禁止する。また、夜勤勤務終了後は、原則として24時間以上の休息時間を確保するものとする。

B. 変則二交代(“長すぎない”夜勤)

16時間夜勤の負担を軽減し、「拘束時間が短い」という点を明確に伝えます。

【求人票への記載例】
当院の夜勤は、19:30から翌朝8:30まで(実働11時間、休憩2時間)とし、1回の拘束時間を13時間以内に収めています。休憩時間は、食事等の休憩1時間に加え、体を横にして休める仮眠時間を確保しています。夜勤明けの日は、原則として終日休みとなり、次の勤務まで十分に体を休めることができます。
【内規の参考文言】
二交代制における夜勤1回あたりの拘束時間は13時間以内、月の夜勤回数は8回以内を基本とする。また、連続して夜勤勤務を行う場合は、最大2連続までとする。

C. 期間限定の夜勤専従(健康管理つき)

集中的に働きたい看護師に向けた選択肢。健康への配慮を明記することで、安心感を醸成します。

【求人票への記載例】
2ヶ月以内の期間限定で、夜勤専従スタッフを募集します。勤務開始前に健康診断を受けていただき、希望者には産業医との面談も設定するなど、健康管理をサポートします。夜勤専従の方の月間勤務時間の上限は144時間程度とし、夜勤明けには48時間の休息期間を基本とするなど、無理なく働ける環境を整えています。
【内規の参考文言】
夜勤専従職員の連続勤務期間は、2ヶ月までとする。契約の延長を希望する場合は、少なくとも1ヶ月のインターバル期間を設けた後に、再設定するものとする。

D. 訪問看護の夜間オンコール+出動翌日調整

オンコール待機の負担を、具体的な制度で軽減していることを示します。

【求人票への記載例】
夜間は当番制でのオンコール対応となります。夜間に緊急出動があった場合は、翌日の業務に支障が出ないよう、始業時間を繰り下げたり、半日休暇を取得したりといった調整が可能です。また、深夜の移動にはタクシーを利用でき、必要に応じて事業所内の宿泊室で仮眠を取ることもできます。

その他の文例(組み合わせ用)

上記のA〜Dに加えて、より具体的に働きやすさを伝えるためのパーツ文例です。

【E. 有床診療所の“2名体制明記”】
夜間は、看護師1名と看護補助者1名の計2名体制を基本としています(夜間看護配置加算の要件に適合)。緊急時には、オンコール体制で近隣に待機している医師が速やかに対応します。夜勤中の仮眠は、連続して90分以上を確保しています。
【F. “週末だけ夜勤”“固定曜日夜勤”を常設】
ご家庭の都合などに合わせ、「金曜日と土曜日のみ」の週末夜勤や、「毎週水曜日のみ」といった固定曜日での夜勤など、多様な働き方に対応しています。扶養内での勤務を希望される方についても、勤務回数や時間について柔軟に相談に応じます。
【I. 三交代でも“正循環+インターバル遵守”】
当院の三交代制シフトは、日勤→準夜勤→深夜勤の「正循環」を徹底しています。また、勤務間隔は必ず11時間以上を確保し、職員の生活リズムと健康に配慮した勤務計画を作成しています。
【J. 子育て配慮の“短時間正職員+夜勤制限”】
1日の勤務時間を6時間などに短縮できる「短時間正職員制度」を導入しています。特に、未就学のお子さんがいる職員については、夜勤回数の上限を設定し、お子さんの成長に合わせて年度ごとに勤務条件を見直すことが可能です。

これらの文例をそのまま、あるいは自施設の実情に合わせて修正して求人票に転記し、それでも埋まらないシフトの穴は、スポットで勤務できる人材で補完するというのが、現実的な解決策になるかもしれません。こうした一時的な人員の補充や、新しい勤務体制の「お試し運用」には、クーラの登録看護師ネットワークをご活用いただけます。ご相談はhttps://business.cu-ra.net/からお気軽にどうぞ。

求人応募に結びつく具体的な記載(チェックリスト)

求人票は、未来の同僚に向けた最初の大切なメッセージです。抽象的な言葉を並べるのではなく、働く人の目線で「ここなら安心して働けそうだ」と感じられるような、具体的な情報を記載することが応募数の向上につながります。以下のチェックリストを参考に、自施設の求人情報を見直してみてはいかがでしょうか。

  • □ 勤務と勤務の間隔(インターバル)や、シフトの循環ルールが数字で明記されているか?
    • (例:「勤務間隔は11時間以上を確保」「準夜→深夜のような逆循環はありません」)
  • □ 月あたりの夜勤回数の目安が、幅(レンジ)を持たせて記載されているか?
    • (例:「月平均4〜6回程度。ご家庭の事情等で変動がある月は相談に応じます」)
  • □ 仮眠について、「連続して何分取れるか」や、仮眠室の具体的な設備が記載されているか?
    • (例:「男女別の鍵付き個室で、リクライニングベッドと寝具を完備しています」「仮眠室の写真はこちら」と、写真へのリンクを貼るのも有効です)
  • □ 夜勤明けの休息に関する考え方が明記されているか?
    • (例:「夜勤明けの日は必ず休みです」「専従夜勤の場合は、明けから48時間の休養を基本とします」)
  • □ (訪問看護の場合)オンコールで出動した翌日の勤務の扱いが具体的に書かれているか?
    • (例:「夜間出動があった翌日は、始業時間を遅らせるか、半休を取得できます」)
  • □ お子さんの学校行事や家族の介護など、個別の事情への配慮について触れられているか?
    • (例:「お子さんの行事がある月は、夜勤回数を減らすなどの調整が可能です」「固定曜日での勤務も相談に応じます」)
  • □ 業務の効率化に関する取り組みについて記載されているか?
    • (例:「申し送りの時間を短縮するため、電子カルテと情報共有ツールを活用しています」)

求人票にこれらの情報を「見える化」するだけでも、応募を検討している看護師に与える印象は大きく変わると考えられます。求人情報の掲載や運用方法の見直しについて、クーラ for 施設では、最短即日でご相談を開始できます。詳しくはhttps://business.cu-ra.net/をご覧ください。

よくある反論と、現実的な落としどころ

ここまで様々な改善策を提案してきましたが、現場の管理者の方々からは、「理想はわかるが、現実的には難しい」という声が聞こえてきそうです。ここでは、よくある反論に対して、段階的にでも実行可能な「落としどころ」を考えてみます。

  • 「人手が足りないので、勤務間インターバルを11時間も空けるのは無理です」
    • 落としどころ: すべてのシフトで一律に11時間以上を確保するのが難しい場合でも、まずは最も心身への負担が大きいとされるシフトの組み合わせ、具体的には「準夜勤務のすぐ後に深夜勤務が入る」「深夜勤務明けの朝に早出勤務が入る」といった並びを禁止することから始めてみてはいかがでしょうか。また、夜勤明けの午前中に定例の会議や研修を入れるのを原則として廃止するだけでも、職員の「休めた」という実感は大きく改善されます。日本看護協会のガイドラインが示す骨子に沿いながら、できるところから段階的に導入していくのが現実的な解決策です。
  • 「三交代制は、申し送りが1日に2回もあって非効率だと感じます」
    • 落としどころ: 申し送りの回数自体が負担になっているのであれば、例えば夜間の時間帯(準夜勤+深夜勤)を一つのブロックと捉え、拘束時間の短い「変則二交代制」を導入したり、前述の「ミックス勤務」を試したりすることで、申し送りの「断面」を減らすことができます。実際に、三交代制から二交代制へ移行したことで、申し送りの簡素化と情報伝達ミスの減少につながったという事例も報告されています。
  • 「小規模な施設なので、立派な仮眠室を用意するスペースがありません」
    • 落としどころ: 最初からホテルのような設備を目指す必要はありません。まずは、プライバシーが守れる「鍵付きの簡易的な個室」と、光を遮る「遮光カーテン」、そして騒音を和らげる工夫(耳栓の配布など)といった、最小構成から始めてみるのがよいでしょう。訪問看護ステーションの事例でも、事業所内に仮眠用の小部屋を設置したという報告があります。今あるスペースを工夫して活用することから検討できます。
  • 「有床診療所では、夜間に看護師を2名配置するのが難しい日があります」
    • 落としどころ: 安定して2名体制を組むのが難しい場合は、その実情を正直に求人票に明記し、ミスマッチを防ぐことが重要です。その上で、緊急時に備えたオンコール体制を整備し、夜勤者が一人でも安心して勤務できるようなバックアップ体制を整えていることをアピールします。そして、どうしても人員が不足する日だけ、外部のスポット人材を活用するというハイブリッドな運用も有効な手段です。

まとめ:制度の名前よりも「体感」を設計する

三交代制が敬遠される傾向にあるのは、制度そのものの欠陥というよりも、実際の運用において、働く人の生活リズムや心身の健康に対する配慮が不足し、「体感としてのつらさ」が強く表れやすい配置やシフトになっていることが大きな原因と考えられます。

逆を言えば、たとえ三交代制という形式は同じでも、勤務と勤務の間隔、シフトの循環ルール、仮眠の質、そして職員間の公平性といった要素を、具体的な「数字」や「ルール」として約束し、実践することができれば、三交代制の弱点はかなり和らげることができるはずです。

これから取り組むべきことのヒントは、以下の点に集約されるかもしれません。

  • まずは一つの病棟、一つのチームから「ミックス勤務」を試してみる。 施設全体で一斉に変える必要はありません。すでに成功している事例を参考に、小規模な試行から始めるのが着実な一歩です。
  • 二交代制への移行を検討する際は、「拘束13時間以内」と「質の高い休養設計」をセットで考える。 ただ勤務時間を長くするだけでは、かえって離職率を高める可能性があります。
  • オンコール対応や期間限定の夜勤専従など、多様な働き方を組み合わせる。 常勤スタッフだけで全てのシフトを回そうとせず、業務の繁閑に合わせて外部の力を柔軟に活用することで、全体の負担を軽減できます。

採用がますます難しくなるこれからの時代、「私たちの職場は、あなたの生活に寄り添うことを約束します」というメッセージを、求人票の上で具体的に示すことができるかどうかが、人材確保の明暗を分けると言っても過言ではないでしょう。

日々のシフトの穴埋めから、新しい勤務体制のお試し導入、そして応募者に響く募集文面の作成まで、クーラは一つの窓口でサポートします。より良い職場づくりのパートナーとして、ぜひお気軽にご相談ください: https://business.cu-ra.net/

参考にした公開事例・調査の一部

  • 総合病院南生協病院における三交代制と変則二交代制のミックス勤務導入、および仮眠室整備の事例
  • 夜勤専従職員の期間限定運用(健康診断の実施、勤務時間の上限設定、休息期間の確保など)に関する取り組み
  • 訪問看護ステーションにおける24時間対応体制での負担軽減策(出動翌日の勤務調整、宿泊室の確保、タクシー利用など)の事例
  • 日本看護協会「2019年 看護職員の労働実態調査」を引用した、夜勤形態別の離職率に関する分析情報
  • 日本看護協会「夜勤・交代制勤務に関するガイドライン」に示された基準(勤務間インターバル11時間、拘束13時間、夜勤回数の上限、正循環の推奨など)
  • 社会医療法人明陽会 平成記念病院(旧・I病院)における三交代制から二交代制への移行による申し送りミスの減少、応募者の増加に関する報告
  • 有床診療所における夜間看護配置加算等の要件と、実際の運用に関する要点

※本稿は、一般に公開されている調査報告や取り組み事例に基づきつつ、実際の現場で運用に落とし込むための情報提供を目的としてまとめています。各種制度の改定や、地域ごとの条例・ルールは随時更新されるため、詳細については、各自治体の最新の通知や、診療報酬・介護報酬の算定要件などもあわせてご確認ください。