医療機関で看護師の採用に携わる皆様は、日々の業務に追われる中で、面接という重要な役割も担っておられることと思います。特に、応募者の健康状態に関する質問は、入職後の業務に支障がないか、また院内感染対策の観点からも、気になる点ではないでしょうか。
しかし、その一方で、健康に関する質問は非常にデリケートな問題です。聞き方を一つ間違えれば、応募者のプライバシーを侵害し、法律に抵触する「就職差別」と受け取られかねません。良かれと思って尋ねたことが、思わぬトラブルに発展する可能性も否定できません。
この記事では、看護師の採用面接において、「応募者の健康について、どこまで聞いて良いのか、何を聞いてはいけないのか」という難しい問題について、法律や行政の指針、そして他の医療機関の具体的な事例を交えながら、できるだけ分かりやすく整理しました。
採用の可否判断に直結させないための工夫や、健康情報を取得する適切なタイミング、そしてその情報の保管方法まで、現場ですぐに役立つ一連の流れを確認できます。日々の採用活動における、ちょっとした疑問や不安を解消する一助となれば幸いです。
なお、この記事でご紹介するような面接票や同意書のひな形作成、具体的な運用方法の整備についてサポートが必要な場合は、クーラの採用支援サービスでご相談を承っております。お気軽にお問い合わせください。
背景と課題:健康情報は「要配慮個人情報」です
まず、すべての前提として知っておくべき大切なことがあります。それは、病歴、健康診断の結果、ストレスチェックの結果といった、個人の健康に関する情報は、個人情報保護法において「要配慮個人情報」として、特に慎重な取り扱いが求められている、ということです。
「要配慮個人情報」とは、不当な差別や偏見、その他の不利益が生じないように、取り扱いに特に配慮を要するものとして法律で定められている情報のことです。本人の人種、信条、社会的身分、病歴、犯罪の経歴、犯罪により害を被った事実などがこれにあたります。
これらの情報を取得する際には、原則として、事前に本人の同意を得なければなりません。また、何のためにその情報を利用するのか(利用目的)を具体的に特定し、その目的を達成するために必要最小限の範囲で取り扱うことが義務付けられています。
特に、労働者の心の健康状態を把握するために実施されるストレスチェックの結果については、より厳格なルールがあります。結果を本人に通知した後、本人の同意なく事業者(人事部門など)にその結果を提供することは法律で禁止されています。もし事業者がその結果を保管する場合には、情報を扱う担当者に対して守秘義務を課し、情報が漏洩しないような体制を整えることが必須とされています。
このような法律上のルールに加えて、採用面接の場面では、厚生労働省が示す「公正な採用選考」という考え方が非常に重要になります。これは、応募者の基本的人権を尊重し、適性と能力のみを基準として採用選考を行う、という基本的な考え方です。
この指針に基づき、厚生労働省は、応募者本人の適性や能力とは直接関係のない事柄を質問したり、把握したりしないように注意を促しています。例えば、ご家族の健康状態や病歴、本籍地や出生地、信仰している宗教に関する質問は、就職差別につながる可能性があるため、不適切な質問の代表例とされています。
また、採用するかどうかを決める目的で、一律に健康診断を実施することも、避けるべきとされています。健康状態はあくまで、入職後に適切な部署へ配置したり、健康に働き続けられるよう配慮したりするために把握するものであり、採用のふるいにかけるためのものではない、という位置づけです。
一方で、医療機関としては、労働安全衛生法に基づいて「雇入れ時健康診断」を実施する義務があります。ただし、これは法律上、採用選考時に実施が義務付けられているものではありません。「常時使用する労働者を雇い入れた際」に実施するものであり、その目的は、応募者の適正な配置や入職後の健康管理に役立てるためのものです。
したがって、採用選考の段階で、すべての応募者に対して一律に血液検査や詳細な医学的検査を課すことは、本来の目的から逸脱し、応募の機会を不当に狭めることになりかねないため、慎重な対応が求められているのが現状です。
全国の医療機関における具体的な取り組み事例
法律や指針だけでは、実際の現場でどう対応すれば良いかイメージしにくいかもしれません。ここでは、他の医療機関がどのように応募者の健康情報を扱っているか、公表されている情報からいくつかの事例をご紹介します。
事例1:大学病院におけるワクチン接種歴の確認
多くの医療機関、特に大規模な病院では、院内感染対策を非常に重視しています。患者さんだけでなく、職員自身の健康を守るためにも、特定の感染症に対する免疫を持っているかどうかの確認は不可欠です。
例えば、岡山大学病院のウェブサイトでは、新しく採用される職員に対して、入職前に麻疹、風疹、水痘(みずぼうそう)、流行性耳下腺炎(おたふくかぜ)、B型肝炎の抗体検査結果またはワクチン接種の証明書を提出するよう案内しています。これは、日本環境感染学会などが作成した「医療関係者のためのワクチンガイドライン」に沿った対応です。
注目すべきは、単に提出を求めるだけでなく、妊娠中やアレルギーなどの理由でワクチン接種ができない人のために、その旨を申告するための専用の様式(接種免除・猶予届)も用意されている点です。これにより、一律の基準で不採用にするのではなく、個別の事情に配慮する姿勢が示されています。
事例2:公立病院における入職前の手続きとしての案内
公立の医療機関でも同様の取り組みが見られます。例えば、神戸市立医療センター中央市民病院などの神戸市民病院機構では、看護職員の募集要項の中で、入職前に必要な回数のワクチン接種を完了し、その証明書のコピーを提出することを依頼しています。
ここでも、「入職前に」というタイミングがポイントです。採用選考の段階ではなく、内定後から入職までの手続きの一環として案内されています。また、期限までに提出が難しい場合の相談窓口も明記されており、応募者が安心して手続きを進められるような配慮がなされています。
事例3:独立行政法人系病院での詳細な案内
独立行政法人国立病院機構の多くの病院でも、採用案内のページで、採用決定後にB型肝炎ウイルスなどの感染症に関する免疫獲得状況の証明書を提出してもらう旨が記載されています。
これらの取り組みに共通しているのは、感染症に関する情報の提出を求める目的が、「院内感染対策」や「医療安全の確保」のためであることを明確にしている点です。採用の可否を判断するための材料ではなく、あくまで医療専門職として安全に業務を遂行するための「条件確認」として位置づけられています。
行政からの注意喚起
一方で、各都道府県の労働局などは、採用選考の進め方について、医療機関を含むすべての事業者に対して注意を促し続けています。例えば、島根労働局の資料では、採用選考時に一律で色覚検査を実施することについて、その必要性を慎重に検討するよう求めています。色覚の特性が業務遂行に重大な影響を及ぼす職務は限定的であり、安易に一律の検査を行うことが就職の機会を不当に奪うことにつながる、という考え方に基づいています。
これらの事例から分かるのは、医療機関が応募者の健康情報を求めること自体が問題なのではなく、その「目的」「タイミング」「伝え方」が極めて重要である、ということです。
解決策:面接での質問の線引きと具体的な運用フロー
それでは、法律や事例を踏まえ、実際の採用現場でどのように対応すれば良いのか、具体的な手順と方法を整理していきましょう。
1) 守るべき3つの基本原則:目的の明確化・タイミングの見極め・情報の分離管理
まず、組織として健康情報の取り扱いに関する基本的なルールを設計することが大切です。
利用目的を具体的にする
なぜ応募者の健康に関する情報を知る必要があるのか、その目的を明確に文書化しておきましょう。例えば、「院内感染対策の徹底、および入職後の安全な業務遂行を目的とした適正配置に役立てるため」「業務を行うにあたり、健康上の配慮が必要かどうかを事前に把握し、必要な支援を行うため」といった具体的な表現が考えられます。そして、この定めた目的以外で情報を利用することは厳禁です。
情報を取得するタイミングを明確に分ける
これが最も重要なポイントの一つです。面接の段階で聞くことと、内定後(より正確には、採用を内々定とし、健康状態の確認などを経て正式な内定とする「条件付き内定」の段階)に確認することを、明確に区別します。
- 面接中:質問は、あくまで「その職務を遂行するために必要な能力や条件を満たしているか」という点に限定します。
- 内々定後:具体的な健康診断の結果や、ワクチン接種歴、抗体価の証明書など、詳細な健康情報は、内々定を出した後に、本人の同意をきちんと得た上で提出を依頼します。
情報を分離して管理する(アクセスできる人を限定する)
応募者から取得した健康情報は、誰でも見られる状態にしてはいけません。採用の合否を判断する人事担当者が見る応募書類とは物理的に分けて保管し、産業医や衛生管理者、産業保健スタッフなど、専門知識を持つ限られた担当者だけがアクセスできるように管理します。特にストレスチェックの結果は、本人の明確な同意がない限り、人事担当者や上司が内容を見ることはできません。
「合理的配慮」の視点を持つ
もし応募者から、ご自身の障害や疾患について申告があった場合、それを理由にすぐに不採用と判断するのではなく、「合理的配慮」の考え方に基づいて対応することが求められます。合理的配慮とは、その人が職場で働く上で支障となっている事柄を取り除くために、事業者が過重な負担にならない範囲で提供する配慮のことです。
例えば、「夜勤の回数を調整する」「定期的な通院のために勤務シフトを調整する」「面接の時間を少し長く取る」「面接時に支援者が同席することを認める」といった対応が考えられます。大切なのは、一方的に判断するのではなく、本人とよく話し合い、どのような配慮があれば安全に働くことができるかを一緒に検討する姿勢です。
これらのルール作りや、必要な書類(面接票、同意書、情報管理台帳など)のひな形一式を整備する際には、クーラの法人向けサービスがお手伝いできます。ご興味があれば、ぜひクーラの法人向けページをご覧ください。
2) 面接で「聞いても良いこと」:職務要件に直結する事実の確認
面接の場では、病名そのものを尋ねるのではなく、「看護師としての業務が、所定の条件で継続的に可能かどうか」を判断するための、具体的な事実について質問を組み立てます。
- 勤務形態に関する質問
- 「当院では月平均〇回程度の夜勤がありますが、対応は可能でしょうか」
- 「オンコール勤務は月におよそ〇回ありますが、ご対応いただけますか」
- 「勤務可能な曜日や時間帯に、何かご希望や制限はありますか」
- 感染症対策に関する知識・経験の確認
- 「標準予防策(スタンダードプリコーション)について、どのようなことだと理解されていますか」
- 「個人防護具(PPE)の着脱は、これまでのご経験の中で問題なく行えていましたか」
- 身体的な業務に関する質問
- 「患者さんの移乗や、少し重い医療機器の搬送といった業務がありますが、対応は可能でしょうか。もし何か配慮が必要な点があれば教えてください」
- 「長時間の立ち仕事になることもありますが、業務を遂行する上で問題ないでしょうか」
- 緊急時の対応能力に関する質問
- 「BLS(一次救命処置)などのご経験はありますか」
- 「緊急時には定められた手順に従い、落ち着いて対応することができますか」
これらの質問は、応募者の健康状態を詮索するものではなく、あくまで看護師という専門職の業務を安全に遂行できるか、その適性や能力を確認するためのものです。逆に、これらの業務と直接関係のない健康状態について、根掘り葉掘り質問することは避けるべきです。
3) 面接では「聞かないこと」:採用差別につながる可能性のある事項
厚生労働省の指針でも明確に示されている通り、以下の事項に関する質問は、就職差別につながる可能性があるため、面接の場では絶対に避けてください。
- 家族に関すること(例:「ご家族に介護が必要な方はいらっしゃいますか」「ご家族の病歴について教えてください」)
- 本人の思想信条に関わること(例:本籍地、出生地、信仰している宗教、支持している政党など)
- 本人の資産や生活環境に関すること(例:持ち家か賃貸か、貯金額など)
- 採用選考の段階で、医学的に合理的な必要性が乏しい検査を一律に実施すること(例:血液検査、色覚検査など)
これらの質問は、応募者の看護師としての適性・能力とは全く関係がありません。
4) すぐに使える、配慮のある聞き方の表現例
面接票や面接時の会話で、そのまま使えるような、より丁寧で誤解を生まない表現の例をいくつかご紹介します。
- 就業上の配慮が必要かどうかを確認したい場合
- 「これから安全に業務を行っていただくために、勤務時間、業務内容、作業環境などで、当院で何か配慮が必要なことがあれば、教えていただけますでしょうか。例えば、重量物の取り扱いや夜勤の回数、皮膚を保護するための配慮、強い光や大きな音への配慮など、どんなことでも構いません」
- (申告があった場合)→「ありがとうございます。その点については、必要に応じて当院の産業医や衛生委員会で検討し、可能な配慮を一緒に考えさせていただきます」
- 感染症対策について事前に伝えたい場合(選考段階では協力をお願いする形に留める)
- 「参考までにお伝えしますと、当院では院内感染対策の一環として、ご入職いただく手続きの中で、いくつかの感染症に関するワクチン接種歴、または抗体価の証明書類の確認をお願いしております。詳細な提出方法につきましては、内々定のご連絡の際に、改めて詳しくご案内いたします」
- メンタルヘルスについて触れる場合
- 「当院では、職員が安心して働けるよう、産業保健スタッフによる健康相談の窓口を設けております。ご自身の健康について何か相談したいことがあれば、いつでも利用することができますので、ご安心ください。面接の場で、ストレスチェックの結果などについてお伺いすることはありません」
このような表現のひな形や、各医療機関の特性に合わせた面接票の作成についても、クーラでご支援が可能です。詳しくはこちらの資料請求ページからお問い合わせください。
NG質問が一目でわかる!面接室で使えるチェックリスト
ここでは、特に重要な「聞かないこと」「聞き方に注意が必要なこと」「聞いても良いこと」の線引きを、視覚的に分かりやすくまとめました。面接官のトレーニング資料として、あるいは面接室のデスクに置いて、面接前の最終確認用としてご活用ください。
施設として整備しておきたい運用手順
面接官個人のスキルに頼るだけでなく、組織としてルールを整備し、一貫した対応ができる体制を整えることが、トラブルを未然に防ぐ上で非常に重要です。最低限、以下の4点を整備することをお勧めします。
1. 関連文書を整備する
- 面接票:質問項目を、職務要件の確認に特化した内容に改訂します。
- 就業上の配慮に関する申出書:応募者が安心して配慮事項を伝えられるよう、専用の欄を設けます。
- 健康情報取得に関する同意書:内々定後に健康情報を提出してもらう際に、利用目的、情報の取り扱い方法を明記した上で、本人から署名をもらうための書類です。
- ワクチン・抗体価提出要領:提出を求める項目、証明書の形式、提出期限、提出先などをまとめた案内状です。
2. 情報を分離して保管するルールを定める
- 採用の合否を判断するための応募書類と、入職後の健康管理に使う健康情報を保管する場所(物理的なキャビネットや、サーバー上のフォルダ)を明確に分けます。
- 健康情報にアクセスできる権限を、産業医や産業保健スタッフなど、必要最小限の担当者に限定します。
3. 面接官への教育を徹底する(10分でできるミニ研修)
- すべての面接官に、上記のようなチェックリストを配布し、内容を一緒に読み合わせます。
- 「ご家族は元気ですか?」「持病はありますか?」といった不適切な質問例を挙げ、それをどのように言い換えれば良いかを、短いロールプレイング形式で確認します。
- 応募者から予期せぬ健康上の相談を受けた際に、その場で安易に回答せず、「専門の担当者から改めてご連絡します」と一度保留にし、産業保健スタッフに相談する、という対応フローを共有します。
4. 例外的なケースへの対応を決めておく
- 応募者から障害や難病について申告があった場合は、通常の選考フローとは別に、「合理的配慮」を検討するためのプロセスに移行するルールを設けます。
- このプロセスでは、本人のプライバシーに配慮しつつ、支援者を交えて面談を行ったり、実際に働く部署の管理者も交えて、どのような配慮が可能かを具体的に話し合ったりします。
これらの文書のひな形作成から、実際の運用が定着するまでの一連の流れを短期間で整備したい場合は、クーラの法人サポートをご活用いただけます。各施設の規模や診療科の特性に合わせて、最適な運用方法をご提案します。
よくある「グレーな質問」の適切な言い換え例
実際の面接では、つい聞いてしまいがちな、しかし配慮に欠ける可能性のある「グレーな質問」が存在します。ここでは、そうした質問をどのように言い換えれば良いか、具体的な例をいくつかご紹介します。
- 悪い例:「持病はありますか?」
- この質問は、単に病気の有無を知りたいという意図に聞こえ、応募者を不安にさせる可能性があります。
- 良い例:「今後の業務を安全に行っていただく上で、私たちが知っておくべき、何か配慮が必要な点はございますか。もしあれば、可能な範囲で業務内容やシフトの調整などを検討いたします」
- 悪い例:「(選考中に)ワクチン接種は全部済んでいますか?」
- 接種の有無が直接、採否に関係するような印象を与えかねません。
- 良い例:「当院では、医療安全の観点から、入職いただく際の手続きとして、ワクチン接種歴や抗体価の確認書類をご提出いただいております。詳細につきましては、採用の内々定をお出しした後に、改めてご案内させていただきます」
- 悪い例:「最近、メンタルヘルスで不調になったことはありますか?」
- 非常にプライベートな内容であり、答えることに強い抵抗を感じる人が多い質問です。
- 良い例:「(面接の最後に)ちなみに、当院では職員の健康をサポートするため、産業保健スタッフによる健康相談窓口をいつでも利用できる体制を整えています。入職後、何か困ったことがあれば、一人で抱え込まずに気軽に相談してくださいね。面接の場で、過去の健康状態についてお伺いすることはありませんので、ご安心ください」
他の事例から学ぶ、運用上の注意点
- 多くの医療機関が、入職前のワクチン・抗体価の提出を求めていますが、これはあくまで医療安全のための「就業の条件確認」であり、応募者をふるいにかける「選考」ではない、という点を明確に区別して運用することが重要です。岡山大学病院の事例のように、接種ができない人向けの申告様式を整えておくと、より丁寧な対応が可能です。
- B型肝炎やC型肝炎など、特定の疾患名を理由に、一律に不採用とするような対応は、就職差別と見なされるリスクが非常に高いです。重要なのは「病名」ではなく、その疾患を抱えながら「安全に業務を遂行するための条件を、どのように調整できるか」を検討する姿勢です。
- かつて多くの職場で慣習的に行われていた色覚検査の一律実施は、現在では見直しの対象となっています。その業務を遂行する上で、色覚の特性が本当に、客観的に見て重大な支障となるのか、職務内容と必要性を個別に検討する姿勢が求められます。
まとめ:病名ではなく「業務遂行の可否」を尋ねる。詳細は内定後に同意を得てから。
看護師採用の面接において、健康状態に関する質問は、法律や人権への配慮が求められる非常にデリケートな領域です。
面接の段階では、応募者のプライバシーに踏み込む病名や家族の健康状態などを尋ねるのではなく、夜勤やオンコールへの対応可否、感染対策に関する知識、必要な作業条件といった、あくまで「業務を遂行するための要件」を満たしているかどうかに焦点を当てて、事実確認を行いましょう。
健康診断結果やワクチン・抗体価の証明書といった、より詳細で個人性の高い健康情報は、採用を内々定とした後に、利用目的を丁寧に説明し、本人の明確な同意を得てから、産業保健ルートを通じて最小限の範囲で取り扱う。そして、ストレスチェックの結果については、本人の同意なく人事が内容を知ることはできない。
これが、医療現場における法律遵守と医療安全を両立させるための、現実的な「質問の線引き」と言えるでしょう。
面接票の見直し、同意書の作成、内々定後の提出フローの構築、そして情報の保管台帳の整備など、一連の仕組みづくりは、クーラがセットでご提供できます。最短で安全な採用フローを確立したい医療機関の皆様は、まずは情報収集の段階でも結構ですので、お気軽にご相談ください。
参考リンク(一部抜粋)
- 公正な採用選考の基本(厚生労働省)
- 採用選考時の健康診断について(大阪労働局)
- 「健康情報を取り扱う際に留意すべき事項」について(個人情報保護委員会)
- ストレスチェック制度関連 Q&A(厚生労働省「こころの耳」)
- 新採用者の方へ(抗体検査・ワクチン接種の証明書提出のお願い)(岡山大学病院)
- 入職前に麻疹・風疹・水痘・流行性耳下腺炎・B型肝炎ワクチンの接種を遵守してください(神戸市立医療センター中央市民病院)
- 医療関係者のためのワクチンガイドライン 第3版(一般社団法人 日本環境感染学会)
ご注意:この記事は、公的に入手可能な情報に基づき、一般的な解釈や事例を解説したものです。個別の事案に関する法的な判断や、最新の法改正の詳細については、必ず所轄の労働局や弁護士などの専門家にご確認ください。院内ルールの標準化や運用設計については、クーラがご支援いたします。